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COLUMN

この映画にムネアツ!
愛と生のために叫び闘う姿に 目頭が熱くなる!

2018.03.22

週末に映画を、“物語”と“セレブ”をキーワードにして紹介する新連載。第1回は、物語で選ぶ編として『BPM ビート・パー・ミニット』をピックアップ。無名な俳優を使い、ドキュメンタリー風に仕上げた本作は、昨年のカンヌ映画祭でグランプリを獲得した実力作だ。

 いま世界的になにかと話題の“LGBT”に関するトピック。“LGBT”とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、そしてトランスジェンダーの頭文字からとった言葉。日本でも近年、性的少数者への差別意識が薄れてきた感もあるけれど、この作品を観ると、シビアな現実がこれでもか、これでもかと浮かび上がってきて、セクシュアリティに関係なく、誰もが魂レベルで切実さを共有してしまうだろう。

舞台となるのは1990年代初頭。当時はHIV/エイズが急速に社会に蔓延。しかも治療薬がなかったため、次々と犠牲者が出ていた。主にゲイ男性を中心にHIVは広がったため、社会的に差別が拡大した時代でもあった。そんな中、パリで活動するアクティビスト団体“ACT UP”が、まだ実験段階の新薬を早く世に出すように抗議する。この映画は、その苦闘の日々を、まるでドキュメンタリーのような映像で再現。観客にとっても、当事者になったような錯覚を覚えさせる。監督のリアリティの追求は、有名な俳優を一切キャスティングしなかった姿勢からも明らかだ。



この作品、なにが衝撃的かというと、ACT UPの過激な行動である。製薬会社に乱入し、社員たちの目の前で赤いペンキの袋を投げつけて、血まみれを連想させる抗議を行う。学校でも勝手に生徒たちにコンドームを配るなど、とにかく“やり過ぎ”が彼らの狙い。しかし、ACT UPのメンバーがどんどん病気を進行させる様子も生々しく描くので、その過激さに、痛々しさや悲しみが伴っていくのが本作のスゴさだ。そして貫かれているのは、シンプルに誰かを愛する心。もし自分の家族やパートナーが命の危機を迎えたら……と、観ながら想像を巡らせてしまう人も多いはず。



ドキュメンタリータッチの作りなので、冒頭からしばらくは作品に入りこみづらいかもしれない。でも、しばらくスクリーンと向かい合っているうちに、思わず映画のエネルギーに取り込まれていく感覚を味わえるのも事実。そして終盤は、不覚にも目頭が熱くなる瞬間が訪れるだろう。予定調和ではない映画体験を求める人には、最高の1本になると断言したい。



『BPM ビート・パー・ミニット』
監督・脚本/ロバン・カンピヨ 出演/ナウエル・ペレーズ・ビスカヤート、アルノー・ヴァロワ 配給/ファントム・フィルム
2017年/フランス/上映時間143分

3月24日より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

©Celine Nieszawer

文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito

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