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COLUMN

この映画にムネアツ!
『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』/『レッド・スパロー』

2018.03.29

物語で選ぶ編
ムネアツなポイントは? “政府とマスコミの息詰まる攻防戦!”
『ペンタゴン・ペーパーズ
最高機密文書』

今年のアカデミー賞で作品賞にノミネートされ、その内容も、政府が機密にしていた文書をマスコミが報道するかどうか苦闘する骨太ストーリー。しかしこの作品、決してガチガチの社会派スタイルではなく、エンタメ作品の興奮とダイナミズムに満ちている。さすが、スティーヴン・スピルバーグ監督。映画館へ行くのに二の足を踏んでいたらもったいない作品だ。



いきなり戦争シーンで始まる本作。『プライベート・ライアン』ほどではないが、スピルバーグらしい臨場感あふれる戦闘アクションに息をのむ。ベトナム戦争を経験した1人の人物が、アメリカ政府が大義のために戦争を止めなかった真実をマスコミにリークすることになるのだが、極秘文書を持ち去り、大量のコピーをとるシークエンスから異様なスリルと緊迫感が充満していく。その後は『ワシントン・ポスト』紙の編集部の“現場”の苦闘が、こちらもテンポよく進み、観る者の集中力を切らせない。



単なるスクープを追うジャーナリスト魂だけでなく、スクープを止めようとするアメリカ政府と、『ワシントン・ポスト』の会社としての未来を天秤にかけるキャサリンの試練を描くことで、より幅広い層の観客に感情移入させるのだ。キャサリン役でアカデミー賞候補になったメリル・ストリープが、重要な決断を示すシーンで“神レベル”の名演技を披露することもあって、後半のスクリーンへの没入度はマックスに達することだろう。



トランプがアメリカ大統領になったことで、スピルバーグは、この“政府×マスコミ”の実話を一刻も早く映画にするべきだと考え、製作中の『レディ・プレイヤー1』を一時中断してまで取り組んだ。あまりに急な製作だったためか、メリル・ストリープ、トム・ハンクス以外は有名スターが出演していない。しかし、そのキャスティングが逆に“無名の人たちが歴史を動かす”という本作のテーマと重なった。



編集部員それぞれの葛藤はもちろん、終盤の短いシーンに登場する人物の一言や、締切ギリギリまで待つ印刷工場の人たちの表情など、小さな勇気が集まって大きなパワーを生み出す、そんな瞬間が何度も訪れるのだ。1971年当時の新聞の印刷風景など、細部の表現にも手を抜かない、巨匠らしい渾身作になっている。



●『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』
監督/スティーヴン・スピルバーグ 出演/メリル・ストリープ、トム・ハンクス 配給/東宝東和
2017年/アメリカ/上映時間116分

3月30日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

©2018 Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC

文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
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