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COLUMN

この映画にムネアツ!
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』『ホース・ソルジャー』

2018.05.02

物語で選ぶ編
ムネアツなポイントは?“悪女トーニャを好きになる!?”
『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』

1994年、リレハンメル冬季オリンピックの直前、全世界を騒然とさせたニュースが流れた。フィギュアスケートのアメリカ代表選考を前に、有力選手が何者かにヒザを殴打される。その事件にライバル選手が関わっていた……というのだ。加害者側に立たされたのが、トーニャ・ハーディング選手。あの伊藤みどりに続いて、女子選手として2人めのトリプルアクセル成功者となった実力の持ち主である。事件の顛末とともに、彼女の人生に迫った本作は、観る者に強烈なインパクトを残す。



この作品、登場人物たちはことごとく“問題アリ”なのである。まずトーニャ・ハーディング本人。自分の得点に不満があれば、ジャッジにクレームをつける。フィギュア選手としてありえない行動もへっちゃら。それくらい自己主張が強い。その彼女を育てた母親は文字どおりの“鬼母”(演じたアリソン・ジャネイはアカデミー賞助演女優賞を受賞した)で、何度も別れてはヨリを戻す元夫は、すぐにキレてトーニャに暴力をふるう。その元夫の友人は、「諜報機関の仕事をしている」と平気で嘘をつく、絵に描いたようなダメ男。ライバル選手、ナンシー・ケリガンの襲撃は、元夫とこの友人が発端になるのだが、計画の無茶苦茶さは笑ってしまうほどだ。



ストーリーはシビアなのに、要所で笑いを誘うのが本作の魅力だろう。軽いユーモアからブラックなテイストまで絶妙に盛りこまれ、作品のテンポを加速する。さらに事件から何年も経った後という設定で、トーニャら主要人物が当時を回想するシーンが挟みこまれる。演じているのは各キャストなのだが、まるで本人が語っているかのように演出され、ドキュメンタリーを観ている感覚に陥るのだ。それも本作のマジックのひとつ。



そしてなにより驚かされるのは、トーニャ・ハーディングを演じたマーゴット・ロビーだ。もちろん氷上でのジャンプやスピンなどは映像処理されているが、トーニャの腕の動きや演技後の堂々とした表情を“完コピ”。フィギュアスケートファンも感動させる。マーゴットは映画『スーサイド・スクワッド』のハーレイ・クイン役でも強烈なキャラに愛らしさを絶妙にまぶしており、事件当時、“悪女”として世界を騒がせたトーニャ・ハーディングに、人間味を与えることに成功した。傲慢で、自分勝手で、気性が荒いという、近くにいてほしくない人物が、映画を観終わった後、ちょっぴり好きになっているはず!



『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
監督/クレイグ・ギレスピー 出演/マーゴット・ロビー、セバスチャン・スタン、アリソン・ジャネイ、ジュリアンヌ・ニコルソン 配給/ショウゲート
2017年/アメリカ/上映時間120分

文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito
©2017 AI Film Entertainment LLC
 
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