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2016.12.24

AMERICAN BOOKS カリフォルニアを巡る物語
【Vol.25】『ナパ奇跡のぶどう畑』×ナパバレー

ワインの一大産地として知られるカリフォルニア州のナパバレー。日帰りでワイナリーを訪れてその日の夜に楽しむワインを購入するなどベイエリアの住人たちの生活になくてはならない存在だ。この地にブドウ畑を構え、世界最高とも称されるワイナリーの創始者ジョン・シェーファーの活動の…

ワインの一大産地として知られるカリフォルニア州のナパバレー。日帰りでワイナリーを訪れてその日の夜に楽しむワインを購入するなどベイエリアの住人たちの生活になくてはならない存在だ。この地にブドウ畑を構え、世界最高とも称されるワイナリーの創始者ジョン・シェーファーの活動の軌跡を記録したのが本書である。“奇跡のぶどう畑”が誕生した背景には、一時の流行に流されずいいものを追究し続けるジョンのひたむきな姿があった。

40代後半で脱サラし、シカゴからナパへ。 話題のワイナリー誕生の軌跡に迫る!

カリフォルニアといえばワイン。古くから果樹栽培が盛んだったこの地でワインの生産がはじまったのは不思議ではないが、世界有数のワイン産地になった理由はなにか? カリフォルニアワインの魅力とは? それを知りたい人におすすめなのが本書である。著者はカリフォルニアを代表するワイナリー、〈シェーファー・ヴィンヤード〉の創始者であるジョン・シェーファーの息子ダグ。シカゴで会社役員を務めていたジョンは1973年、40代後半でその安定した地位を捨て、サンフランシスコの北約50マイルにあるナパバレーでブドウ畑をはじめた。当時、アメリカ人の間でワインへの関心が高まり、ナパバレーはワイン生産の最先端として注目を集めていた。

ジョンはナパの丘陵地帯を購入し、ワイン用ブドウ品種のひとつ、カベルネ・ソーヴィニヨンを作るという夢に取り組みはじめる。当時のアメリカでは白ワインのほうが人気で、生産者の多くもフランスワインを意識して、ナパバレーでできるブドウの濃密さを生かさず、わざわざ軽いワインを造ろうとしていた。それに対してジョンはあえて自分の好みである、コクのある赤ワインを追究したのだ。

ナパに移住したとき高校生だったダグは大学卒業後、ほかのブドウ畑で修業を積んでから父とともに働くようになる。初期の頃の苦労は並大抵ではなかった。悪天候に見舞われたこともあれば、有害な昆虫やブドウ樹の感染症で大きな打撃を受けたこともある。経済不況や人々の嗜好の変化にも左右される。それを乗り越え、〈シェーファー・ヴィンヤード〉は’83年、“ヒルサイド・セレクト”というカベルネ・ソーヴィニヨンの人気商品を生み出す。そしてこの時期、ナパバレー全体も芳醇で濃密なワインの産地として知られるようになってくる。
「カリフォルニアの特定の地域のワインには独特の個性があることを認める消費者が、少ないながらも増えてきた。そして、ブドウ栽培とワインの醸造の技術の進歩によって、ナパバレーのワインの品質は一躍トップの座に躍りでたのである」(P204ー205)
 
その後も〈シェーファー・ヴィンヤード〉は技術革新を進め、独自の道を歩み続けた。観光客が殺到するなど時代も変化したが、ワイン造りを最優先して対応。なかでも感心させられたのは有機農業に切り替えた話だ。従来のブドウ畑は殺虫剤を大量散布し害虫を一掃していたが、彼らは昆虫や動物たちと共生する道を選ぶ。電力もすべてソーラー発電に切り替え、環境に優しい経営をするようになったのである。こうした努力と先見の明が実り、“ヒルサイド・セレクト”は’90年代に極上のワインという評価を確立する。

ワイン好きにはもうたまらない本だが、ビジネスモデルとしてもものすごく参考になるはず。成功の秘訣として痛感するのは、一時的な流行にとらわれず、いいものを追究する姿勢である。

あの映画監督もワイナリーを構えるワイン産地のナパバレー!

サンフランシスコの北部にあるナパバレーは、世界でも有数のワンン産地だ。この地とセレブの関係を語るうえで欠かせないのが、映画監督のフランシス・フォード・コッポラ。祖父の代から日常用のワイン造りを行っていたコッポラ家だが、彼は1975年に自分の名を冠したワイナリーを購入し、今では名ワイナリーとして広く知られている。

“ワイントレイン”に乗ってワイナリーツアーを楽しむのも人気!

ナパバレーのワイナリーは、観光ツアーのデスティネーションとしても人気が高い。カリフォルニアワインを堪能できる高級レストランをはじめ、熱気球やスパなど、多くのアトラクションがある。また、田園風景の中を走る観光列車“ワイントレイン”も人気。豪華な食堂車の車窓からブドウ畑を眺め、美味しい食事とワインの試飲を楽しめる。

ワイン評論家から高評価を獲得する〈シェーファー・ヴィンヤード〉!

ワインを評価するうえで、最も影響力があるとされる評論家ロバート・パーカーの評価で、〈シェーファー・ヴィンヤード〉の“ヒルサイド・セレクト カベルネソーヴィニヨン2002年ヴィンテージ”はパーカーポイント100点を獲得。そのほかのワインも軒並み高い評価を獲得するなど、名門ワイナリーとしての地位を確立している。

●『ナパ 奇跡のぶどう畑』

ダグ・シェーファー、アンディ・デムスキィ 共著
野澤玲子 訳 CCCメディアハウス 2000円


雑誌『Safari』2月号 P247掲載

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文=上岡伸雄 text : Nobuo Kamioka
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