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CULTURE カルチャー

2017.09.30

AMERICAN BOOKS カリフォルニアを巡る物語
【Vol.34】『ラグナ・ヒート』×ラグナビーチ

 風光明媚な町として人気のラグナビーチ。その町に1人の傷心の刑事がLAから帰郷し、殺人捜査を担当するようになる。ある日、彼のもとに奇妙な殺人事件が舞いこむ。被害者は頭に石を打ちこまれ、火をつけられ、喉には紙幣が詰められていた。捜査が進むにつれて、暗い過去が明らかになっていく。現…

 風光明媚な町として人気のラグナビーチ。その町に1人の傷心の刑事がLAから帰郷し、殺人捜査を担当するようになる。ある日、彼のもとに奇妙な殺人事件が舞いこむ。被害者は頭に石を打ちこまれ、火をつけられ、喉には紙幣が詰められていた。捜査が進むにつれて、暗い過去が明らかになっていく。現代を代表するミステリー作家のデビュー作で、映画化もされた本作。南カリフォルニアの爽やかなシーンとともに描かれた名作!

LAから地元に戻った傷心の男が
自らの人生を問い直す事件に挑む!?


 オレンジカウンティの南部にあるラグナビーチは風光明媚で、リゾートとして知られる町である。19世紀に入植した人々がユーカリを植えたため、この木が町のシンボルとなっており、美しい風景と温暖な気候を目当てに多くの芸術家が移り住んだ。そんな町の魅力は、本書の主人公、トム・シェパードがクルマで町を走るシーンにもよく表れている。「セラ通りに入るとユーカリの香りが車を包み、今世紀初頭、画家たちがここラグナに誘い寄せられた理由について千回目の納得をした。平和と静寂に満ち、創作にはうってつけの場所だ。現在でも、夏ともなれば、おびただしい数の観光客が訪れる」(P71)(※1985年の出版なので、「今世紀」とは20世紀を指す)

 ところがこの平和な町で殺人事件が相次いで起きる。最初はティム・アルジャノンという厩舎の経営者で、次はホープ・グリーリーという老婦人。どちらも頭に石を打ちこまれてから焼かれるという残虐な殺され方をされ、金目のものは盗られていない。しかも、「嘘つきは焼け死ぬ。小さな嘘つきは最初に焼け死ぬ」という言葉が残されていたことから、同一犯による怨恨のための犯罪と思われる。

 この事件の捜査に当たるのが、ラグナビーチ警察の刑事であるトムなのだが、彼は心に傷を抱えた男である。彼の母は彼が幼いときに殺され、高校時代からの恋人だった妻のルイーズとは離婚したばかり。LA警察にいたときに少年を射殺してしまい、正当な武器の使用ではあったもののマスコミに追及されて、出身地であるラグナビーチに移って来たばかりなのだ。これは犯人探しの物語であるとともに、トムの再生の物語でもある。

 殺された2人の男女に共通しているのは、30年前にサニーサイドという高級テニスクラブのメンバーであったこと。しかも、ホープの夫はその頃にミステリアスな死を遂げている。さらにトムの母親が殺され、その犯人とされた画家がフォルサム刑務所に収監されたのも同じ頃。当時トムの父のウェイドもサニーサイドの会員で、父はこの後警察官を辞め、聖職者に転身。これらの事実にどんな繋がりがあるのか? トムはサニーサイドのオーナー、ジョー・ダティーラらを調べ、30年前の事件の真相を突き止める。そして殺人事件の犯人とも対決する……。

 こうした謎解きは実にスリリングで、一度読みはじめたらやめられないはず。と同時に、本書はラグナビーチの特徴を生かしたシーンに満ちている。ダウンタウンにあふれる観光客、立ち並ぶ画廊と、静謐な雰囲気をたたえた聖セシリア教会の礼拝堂、そしてダイバーズ入り江の美しさ。このビーチで、月明かりの下、トムと新しい恋人とが愛し合うシーンも忘れがたい。さらにトムはオートバイのライダーでもあり、ラグナビーチやサンタアナをビュンビュン走り回る。そのときの風景の描写から、読者はラグナビーチの風を一緒に感じられるはずだ。

Information

●『ラグナ・ヒート』
T・ジェファーソン・パーカー 著 山本光伸 訳 扶桑社 895円

雑誌Safari11月号 P317掲載

文=上岡伸雄 text : Nobuo Kamioka
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