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COLUMN

この映画にムネアツ!
『パシフィック・リム:アップライジング』/『さよなら、僕のマンハッタン』

2018.04.12

物語で選ぶ編
ムネアツなポイントは?“年上女子に憧れる男子的共感度が高し!!”
『さよなら、僕のマンハッタン』


なんとなく胸が締めつけられる予感がする、このタイトル。原題の「The Only Living Boy in New York(=ニューヨークの少年)」は、サイモン&ガーファンクルの名曲だ。「サウンド・オブ・サイレンス」「明日に架ける橋」ほどメジャーではないが、彼らのファンなら絶対に愛して止まない切ないメロディの、隠れた名曲だ。今作は、その曲から生まれた脚本を映画化したもの。歌詞とストーリーは一致していないが、主人公の名前=トムは歌詞と同じである。



大学を卒業するも、将来の進路に悩むトーマス(トム)には、想いを寄せる女性がいるが、彼女にはすでに恋人がいる。ある日、トムは父に愛人がいることを知る。その愛人を追いかけるうち、トムも彼女に惹かれていく……。と、なにやら妖しくも危険な香りが立ちこめる展開。若いトムが経験豊富な年上女性に翻弄されつつ、それでも自分を大人っぽく見せようとするプライドなどが描かれ、男子的共感度の高いストーリーになっている。



監督を務めたのは、『(500)日のサマ—』などのマーク・ウェブ。そういえば『(500)日のサマ—』の主人公もトムだった。そしてこの『さよなら〜』の主人公はトーマス・ウェブ。偶然のつながりだが、監督の分身のように感じてしまう。『(500)日のサマ—』や前作の『gifted ギフテッド』もそうだったが、ウェブ監督の作品は、使用楽曲やスコアと、物語、あるいは作品のムードとのリンクを重要視する人。“音楽あるある”ネタで楽しませてきた。今回もサイモン&ガーファンクルや、ボブ・ディラン、ルー・リードなどの曲が使われるのだが、タイトル曲以外は、これみよがしではなくサラッと流れる感じ。そこが妙に心地よい。



全体にストーリーもあっさりとしている。盛り上がりそうで盛り上がらない。ではつまらないかといえば、そうではない。この映画の魅力は“小説”に似ているかもしれない。一度めはなにげなく通りすぎた描写やセリフが、次に観たときには胸に深く突き刺さることがある。好きな小説を読み直したときの“発見”のような感覚……。

主人公を含め、何人かの登場人物が文章に関わる人生を送っているせいか、あちこちに小説的な至言がちりばめられ、それが時間とともに熟成されて胸に迫ってくるのだろう。「人生に身を委ねろ。窓を見つけて、飛び出せ」、「世界で最も長い距離は、現実と理想の間に横たわっている」、などなど。もちろん1回観ただけでも、サラリとした印象が静かに心にしみわたる、不思議なテイストの1作である。



●『さよなら、僕のマンハッタン』
製作総指揮・出演/ジェフ・ブリッジス 監督/マーク・ウェブ 出演/カラム・ターナー、ケイト・ベッキンセール、ピアース・ブロスナン 配給/ロングライド
2017年/アメリカ/上映時間88分

4月14日より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

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文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito

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