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CULTURE カルチャー

2018.03.08

アカデミー賞の真の主役!
フォックス・サーチライトの勝因は?

映画を観るときに監督や俳優で作品を選びがち。だけど、たまには製作会社で選んでみるっていうのも面白い。

実は、今年のアカデミー賞作品賞を制覇した製作会社は、名作製造工場とも呼べるほど良質な作品を長年作り続けている!

今年のアカデミー賞は、『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞・監督賞など4部門を制したが、最後まで作品賞を争ったのが『スリー・ビルボード』だった。『シェイプ・オブ・ウォーター』が最多13部門ノミネートだったのに対し、『スリー・ビルボード』はゴールデン・グローブなど主要な前哨戦で作品賞を受賞していたので、おそらく投票も大接戦だったと思われる。


『シェイプ・オブ・ウォーター』


『スリー・ビルボード』

この2作には共通点がある。ともにフォックス・サーチライト・ピクチャーズ(以下、サーチライト)の作品なのだ。通常、このように同じスタジオの作品がアカデミー賞の栄冠を争うことは珍しい。スタジオはその年の“本命”作品を絞って、賞レースのキャンペーンを行うからだ。今年のサーチライトの場合、「どちらかが必ず受賞するだろう」という安泰状態だったのである。


低予算でも作家性を重視する姿勢

サーチライトは、その名からわかるとおり、20世紀フォックス映画の子会社である。20世紀フォックスといえば、『スター・ウォーズ』の最初の6作に、『タイタニック』、『アバター』など映画史に残る作品を世に送り出してきたハリウッドのメジャースタジオ。ここ数年も『猿の惑星』や『X-MEN』のシリーズ、『オデッセイ』や『デッドプール』などを大ヒットさせている。一方でサーチライトは、メガヒットを狙う超大作ではなく、低予算でも作家性を重視し、クオリティの高い作品を誕生させるのが使命。メジャースタジオの傘下にありながら、インディーズの精神をモットーにしている。製作費を比べると、20世紀フォックスの『タイタニック』が2億ドル、『猿の惑星/聖戦記』が1億5000万ドルに対し、『シェイプ・オブ・ウォーター』は、わずか1950万ドルである。


ギレルモ・デル・トロ監督

『シェイプ・オブ・ウォーター』のギレルモ・デル・トロ監督は、こんなことを言っている。「製作費は安くてもいいから、とにかく自分の作りたいものを作らせてほしい。そうお願いしたら受け入れてくれた」。その結果、口のきけないヒロインと半魚人のような生き物のラブストーリーという、メジャースタジオなら二の足を踏みそうな特殊で過激な設定を自由に撮らせ、監督の才能が最大限に発揮されたのである。作りたいものを作り、観客が受け入れるという、映画の本来の目的が達成されたわけで、アカデミー賞作品賞も当然だといえる。


『スラムドッグ$ミリオネア』

こうしたポリシーのサーチライト作品は、昨年までの過去10年で、アカデミー賞作品賞ノミネートが10回という驚異的な数字を残している。最高栄誉の作品賞を受賞したのも、‛08年『スラムドッグ$ミリオネア』、‘13年『それでも夜は明ける』、‛14年『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と3回。『クレイジー・ハート』や『ブラック・スワン』など演技賞を受賞した作品はさらに数が多く、サーチライト作品なら、“アカデミー賞への道”が築かれると言っても過言ではない。『ONCE ダブリンの街角へ』や『(500)日のサマー』のように映画ファンの心をつかみ、長年、愛され続ける珠玉作も、サーチライトは多数、誕生させている。


『(500)日のサマー』

『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督は、その後、『アメイジング・スパイダーマン』という超大作を任されたが、昨年の『gifted/ギフテッド』でサーチライトに戻ってきた。デル・トロと同じように「サーチライトなら、すべて自分でコントロールできる」と創作の喜びを語っており、クリエイターに与える自由→理想の映画を誕生させる→ほかのクリエイターも企画を持ちこんでくる、という好循環がサーチライトにはでき上がっているのだ。前述の『バードマン〜』は、監督のアレハンドロ・G・イニャリトゥが、20世紀フォックスでの『レヴェナント:蘇えりし者』が撮影地の天候などで製作が延期になった際、時間が空いたので……と、撮った作品である。このあたりのフットワークの軽さもサーチライトの強み。ウェス・アンダーソンなど、サーチライト“専属”となった才能もいる。


作り手、観客両方から勝ち得た信頼

これほどの成功は、もちろんサーチライト側の“才能”にも起因している。他社で製作が進んでいた『スラムドッグ$ミリオネア』の配給権を早くから獲得するなど、その“目利き”はハリウッドでも随一。作品数は年間10本程度で、作品ごとにきめ細やかな宣伝戦略も立てるのがサーチライトの流儀。サーチライト作品に出演することを名誉と考える実力派スターたちも増えている。メガヒット作品で大儲けはできないが、作り手側からも、そして観客側からも“信頼”を勝ち得ることで、サーチライトは映画界で確固としたブランドになったのだ。

文=斉藤博昭
(C)AP/ Visual Press Agency/Everett Collection/Collection Christophel/アフロ
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